遺産分割でもめていて、誰がどの遺産を取得するかが決まりません。遺産分割が決まるまで相続税は申告しなくてもよいですか?
半年前に母が亡くなり、相続人は母の子である、私と弟と妹の3人です。
母の遺産について相続人間で意見が分かれ、まとまりそうにありません。母が生前お付き合いのあった金融機関の担当者からは、相続税の申告が必要だと思うと言われていますが、このように遺産分割協議が調っていない状況なので、相続税の申告はしなくてもよいですか?
遺産分割協議が調っていない、いわゆる未分割の状態であっても、相続税の申告は必要です。
相続税の申告は、相続などにより取得した財産(一定の生前贈与財産を含む)と、相続時精算課税制度の適用を受けて贈与を受けた財産の合計額が、次の遺産に係る基礎控除額を超える場合に必要となる手続です。
※ 養子がいる場合には、数に制限があります。
そして相続税の申告により納税が必要となった場合には、納税しなければなりません。
相続税の申告は、相続の開始があったことを知った日(通常は亡くなった日)の翌日から10ヶ月以内に行います。また、申告期限=納期限ですので、相続税の納付も10ヶ月以内にしなければなりません。期限の延長が可能な例外はありますが、「遺産分割協議が調わない」という理由はこの例外にはあたらず、延長できません。したがって、いくら遺産分割協議が調っていなくても、10ヶ月の期限内に、相続税の申告書の提出及び納税を行わなければなりません。
この場合、遺産分割協議が調っていないことにより、各相続人が民法に規定する法定相続分で財産を相続したものとして、相続税の申告及び納税を行うこととなります。
申告期限においてお母様の遺産を一銭も相続していなくても、ご自分の法定相続分(1/3)に相当する財産に対する相続税は納めなければなりません。そして、その相続税を期限までに納められない場合には、国から「延滞税」という利息を請求されてしまう点にも注意しましょう。
なお、一旦相続税の申告や納税を行った後で、遺産分割協議が調ったことで当初の申告税額と異なることとなった場合には、実際に分割した財産の額に基づき申告や納税の手続を行うことができます。特に当初の申告税額よりも少なくなる場合には還付を受けることができますが、この手続には期限(分割があったことを知った日の翌日から4ヶ月以内)がありますので、ご注意ください。
相続税では、配偶者の税額の軽減が受けられる特例や、宅地等の評価減が受けられる特例など、税の軽減の特例や納税の特例がいくつか設けられています。しかし、いずれの特例も遺産分割協議においてその取得者が決まっていない場合(未分割の場合)には、適用を受けることができません。
つまり、遺産分割協議の不調は、納期限までの納税資金準備を困難にするだけでなく、特例を受けることができないため、納付税額も多額になります。まさに悪循環です。
相続税が課税される可能性のある方は、まず「10ヶ月」という期限を意識して手続を進めましょう。
将来の相続時に遺産分割協議が調わないと予想される場合には、遺言書を作成しておくことにより、このような事態を避けることができます。遺されるご家族のために、生前からできる対策を講じておくことも大切でしょう。
<参考>
国税庁タックスアンサー「No.4205 相続税の申告と納税」「No.4208 相続財産が分割されていないときの申告」など
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